聴覚に障害のある人とのオンラインミーティングで工夫できること

聴覚に障害のある人とのオンラインミーティングで工夫できること

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、仕事が突然リモートワーク(テレワーク)に切り替わったという方も少なくないのではないでしょうか。

リモートワークでのコミュニケーションは、メールやチャットなどのテキスト情報が中心となります。また、業務内容によっては、Zoomなどのビデオ会議サービスを使ったオンラインミーティングでのやりとりが必要になることもあります。

聴覚障害のある人は、聴覚情報が受け取りにいことで、口頭でのコミュニケーションに困難が生じる場合があります。さらにオンラインミーティングでは、回線の状況によって、よりいっそう声が聞こえにくくなったり、相手の表情や口の動きがさらに読み取りにくくなったり、会話での間がつかみづらかったりと、通常のオフラインでの会議以上に不安や困難が大きくなることが想定されます。

聴覚障害のある方が円滑に仕事を進めるためには、「筆談やメールなどでの情報提供を求める」「手話通訳を依頼する」などの「情報保障」が必須となります。普段はそれぞれの職場の状況に合わせ、さまざまな工夫をしているかもしれません。ですが、リモートワークでの情報保障についてのノウハウを持っている人は、まだまだ少ないのが現状ではないでしょうか。

この記事では、聴覚障害のある人や、聴覚障害のある人と共に働く周囲の人たちが、オンラインミーティングを交えたリモートワークをするうえでできる工夫をご紹介します。

「UDトーク」など、文字起こしツールの活用を

ビデオ通話サービスによるオンラインミーティングは、環境によっては音質が悪くなることもあれば、口元を読めるほど鮮明な動画にはならないこともあります。

そのため、聴覚障害のある人にとっては、オフラインでの会議よりも内容の理解が大幅に難しくなります。対処法として、オンライン上でリアルタイムに手話通訳を入れる、文字によるチャットを同時に打ち込んでもらうといった方法が考えられますが、事例の蓄積や研究がまだあまり進んでいない、手話通訳・チャット入力を担当する人員を確保することが難しいといった課題があります。

そこで、低コストで誰でも活用できる情報保障の手段として、自動文字起こしツールをご紹介します。代表的なサービスとして、「UDトーク(外部リンク)」という音声認識機能で会話を見える化するアプリが挙げられます。スマートフォンやタブレットなどで使用でき、アプリを導入したデバイスや、デバイスと接続したマイクに向かって発話すると、発話内容が文字認識され、書き起こされます。

UDトークの画面のスクリーンショット。音声での発言内容が、ふりがなつきの文字として、画面に表示されている。操作ボタンとして、「手書き入力」「タップして終了」「キーボード」が表示されている。

負担や不安を最小化するため、周囲の人との協力体制を

UDトークを使用する場合、文字化されたテキストはリアルタイムで編集可能なので、誤入力をほかのメンバーに修正してもらうこともできます。発話内容を、より正確に文字化して記録するには、一緒に働くメンバーに協力してもらって、リアルタイムでの修正をお願いすると良いでしょう。

しかし、たとえ自動文字起こしツールを使ったとしても、不得手な聞き取りをしながら、あわせて文字も追いながら内容を理解していくことは容易ではありません。気力・体力ともに消耗が大きくなってしまうため、メールやチャットで済む内容はメール・チャットで完結させ、不必要にオンラインミーティングの回数を増やさないようにするなど、チーム全体で運営の工夫をしてみてください。

また、オンラインミーティングをする際も、次のような工夫や配慮をすることで、聴覚障害のある方を含め、参加者全体の情報共有が容易になるでしょう。

  • 事前に参加者と資料を共有しておく
  • トピックごとの要約をチャットに残す
  • 可能な限り短時間で終わらせる

まとめ

リモートワークには、聴覚障害のある人にとって難しさが感じられる場面が多々あります。しかし数年前に比べると、現在は文字起こしツールの性能も上がり、いろいろな方法を試す余地があると思います。オンラインミーティングを試みる際は、今回紹介した「UDトーク」などのアプリを試してみてはいかがでしょうか。

また、聴覚障害があり、新型コロナウイルス感染拡大の影響による仕事環境の変化についてお困りのことがあれば、ぜひ「スワローポケット」にご意見をお寄せください。お待ちしております。

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