依存症等の当事者によるオンライン自助グループ運営ガイド

依存症等の当事者によるオンライン自助グループ運営ガイド

依存症の回復において大きな役割を担うものの一つに「自助グループ」があります。依存症が「孤立の病」と言われることからも分かるように、依存症の当時者にとって、孤立しないこと、仲間たちとつながることは非常に重要です。

しかし、新型コロナウイルスの影響を受けて公民館などの公共施設が閉鎖し、現在、自助グループの開催場所が失われています。また、執行猶予中の依存症当事者のための回復支援プログラムも、多くのところで中止されている状況です。

そこでこの記事では、オンラインでの自助グループとして現在活動している「三森自助グループの森」の運営指針をもとに、これからオンラインでの自助グループを立ち上げようとする方に向けた運営ガイドをご紹介します。

依存症の自助グループを取り巻く状況や課題、オンライン自助グループの取り組み事例については、以下の記事にもまとめてありますのでご参照ください。

運営メンバーについて

オンラインでの自助グループの運営は、単独でするのではなく、複数人のチーム体制で行いましょう。

特に、設立当初は自助グループ経験者の力が必要になる場面も多いため、自助グループ経験者を運営メンバーに含めておくことが重要です。

運営メンバーを選ぶ際、そのメンバー自身の回復度合いは重要ではありません。しかし、可能であれば、運営メンバーの嗜癖・性格・性別・年齢・12ステップの経験・ソブラエティ(しらふでいる期間)の長さなどに偏りがないほうが、多様な参加者に対応しやすくなります。

運営の初期段階は頻繁なコミュニケーションを必要とします。また、ルールや雰囲気が安定しない中ではトラブルが起こる可能性が高いため、人によっては精神を消耗しやすくなるかもしれません。そのため、依存症者が自助グループ設立初期の運営に関わる場合は、ソブラエティを2年以上保てつことができている人が望ましいと思われます。

また、同一メンバーで長く運営を続けると、考え方が偏ったり権力が集中する可能性もあります。運営が安定し始めたら、自助グループ内で新しい運営メンバーを誘ってみましょう。

運営上の心構え

運営者は、参加者の心の安全が守られる場所をつくり、その保持に努めます。自助グループの運営は「仕事」ではありません。自分自身のために行うことです。

自助グループは同じ立場の人たちの集まりですので、グループの中で誰がどのような役割を持っていても、参加者は全員同じ立場の仲間であることを忘れないようにしましょう。運営者もあくまで一つの役割であって、決して権力を得るわけではないことの自覚も必要です。

特に、助けてあげる、やってあげるといったの思考はふさわしくありません。そのような思考で運営を行うと、宗教者と信仰者の間に見られがちな上下関係が生じることもあります。

また、運営に必要なお金以外の、運営に必要なお金以外を要求することも、自分自身の回復を妨げる要素となるためNGです。

グループの長期継続のためにも、運営メンバーは自身の私生活を犠牲にしない範囲で運営に携わることも重要です。何らかの事情で運営側の活動をするのがきつくなった場合は、早めにほかの運営メンバーに相談しましょう。

安定しやすい運営の工夫

運営初期は特に、グループ内の雰囲気づくりに注力しましょう。運営側も含め、全員が緊張しています。失敗に寛容であろうとする心持ちが大切です。

グループのルール(言いっぱなし・聞きっぱなし、秘密が守られる環境を維持するなど)をしっかりと作り、参加者全員に提示します。「場の空気を読もう」を前提とした組織では、解釈の違いが生じやすくなります。

ルールは運営を進めながら適宜調整していきます。特に初期段階はこまめにルールを見直す必要があり、そのためにも、特に初めのうちは、運営メンバー複数人でミーティングに参加し、参加者の様子やミーティングの進み方を見ることが望ましいです。

常連の参加者にルールが伝わると、グループの雰囲気が安定しやすい傾向があります。そのためにもルールはこまめにアナウンスしましょう。

なお、ルールや場の雰囲気がある程度固まるまでは、新しい試みや自由度の高い活動は行わない方が、比較的早くグループが安定します。

ルールを作成するときは、自助グループは参加者の心の安全が守られる場所であるということを意識しましょう。役割を押し付けられたり他者と比較されるような状況は、生きづらさを生み出します。

そして、ルール作りや全体に関わる決定は、運営メンバー全員で行うようにします。誰か一人が強い権力を持つことを許す体制は好ましくありません。

サービスシップ(司会、次回日程の連絡など運営業務)はテンプレートに則って行えるように、あらかじめマニュアルを作成し、どんな人でも8割は成功する仕組みをつくりましょう。10割を目指すと息苦しさを感じやすいため、2割は個人の自由にできる形が望ましいです。逆に、自由度が高すぎると、初めて行う人が挫折しやすくなったり、得意・不得意が出ることで上下関係などが生じる恐れがあります。

設立初期段階におけるミーティングでは、参加者が一人ずつ順番に語るスタイルの方が、安全な場所であると認識されやすいためおすすめです。自由に話すフリートーク形式は、アサーティブスキル(相手を対等な関係として尊重し、誠実かつ率直に自分の気持ちや意見を表現するコミュニケーションスキル)や、自分の話と他人の話に境界を付ける力が必要となるため、慣れていないと難易度が高いとされています。

もし、グループ内で問題が起きた場合は、隠さず、その場で解決するよう努めることが全員のためになります。グループ内に秘密やタブーをつくると、当事者にとっても息苦しさを与えることになります。対策としては、問題を起こさないようにするのではなく、問題が起きたときの対処ルールをあらかじめ作っておくことが重要です。

例:

  • 話し合いへの進み方
  • 謝罪方法
  • 12ステップに基づいた解決法

対処のルールは、裁くためではなく成長するためのものであることが理想的です。

ミーティング中の注意点

ミーティングの状況は複数の運営メンバーで確認し、何かを判断する際は、必ずメンバー間で相談してから行いましょう。

ミーティング中は、初めて参加する人を積極的に迎える気持ちで、初めての人の居心地を常に意識しましょう。

もし、話している人の心の安全を脅かすようなルール違反が起こった場合、運営メンバーは十分な注意喚起に努めてください。

ルール違反に対する注意喚起を、チャットツールなどで行う場合は、文字だけでなく絵文字なども使用して、やわらかい表現を心がけてみてください。違反した当人以外の人に不安や怖さを感じさせるような伝え方は避け、「失敗してもやり直せばいい」と思える雰囲気を大事にしましょう。

人の話を否定する発言や、助言や忠告のように聞こえる発言が始まった場合は、運営メンバーがそのつどルールを説明し、耳を傾けるだけに徹することを促しましょう。

ミーティングでは、運営メンバーも積極的に自分自身について話しましょう。参加者の「こんな話をしていいのだろうか」「どんなふうに話せばいいのだろうか」といった不安を取り除きやすくなります。

ミーティング主催者の心構え

多くの場合、運営メンバーのうち1名がローテーションでミーティングを主催します。

しかし、そのミーティングの主催者も回復を目指す当事者の一人であり、参加者全員と対等な存在です。ミーティングの責任を一人で背負ったり、あるいは、自分の立ち位置を勘違いしないよう注意が必要です(人よりも回復しているから主催側にいるわけではありません)。

主催者には自助グループの方針を決める決定権がありますが、運営メンバーと相談しながら進めましょう。独断での決定はグループのためになりません。

そして、やるべき業務や責任を一人で抱え込まず、積極的にほかの運営メンバーに振って、業務も責任も分散していきましょう。それが自助グループの長期継続につながります。

ミーティングのテーマを決める際は、参加者の都合や立場よりも、主催者自身の思い、したいことを優先しましょう。グループミーティングを開催するのは、義務ではなく自身のためでもあるという認識が、長期的に取り組めるようにしていくためにも重要です。

主催者自身が生きづらさを感じているからこそ、そのタイミングで行えるテーマに目を向けてみてください。そのテーマに、このタイミングだから共感できるという人が、きっといます。

自助グループの規模が大きくなってくると、ミーティングで扱うテーマも、初期とは変えていく必要が出てきます。全員に適している内容ではなく、参加者が個々に抱える課題など、一人ひとりに目を向けたうえでテーマを絞ると、参加者の誰かを取りこぼすといった状況を回避しつつ、より多くの人に向けた共感の場を設けることができます。

もう一つ重要なことに、「正しい回復」の話はしないというものがあります。特に主催者は十分に注意する必要があります。主催者が「正しい回復」について口にした場合、そうしなくてはならないという印象を与える恐れがあります。どのように回復するか、自助グループをどう使うかは、個人が決めることです。

ミーティングの主催者であっても、その最中は参加者の一人として、自分の話だけをすることを徹底しましょう。

ミーティングで扱うテーマに必要などの理由で、参加者に何かを依頼する必要があるときは、会話の中で説明するよりも、ノートにまとめたり図にしたりするなどして視覚化し、一度に全員に向けて説明するほうが、混乱を招きにくくなります。また、誰もがいつでも見返せる形でシェアしておくと、主催者自身の負担も減らせます。

自助グループの活動の中で、もし誰かが失敗したように見えても、その人の役割を奪うような過剰な手助けはしないようにしましょう。場合によってフォローは必要ですが、失敗や再挑戦は当人の成長と回復ステップにおいて重要であり、健やかに運営をおこなっていくうえでも大切な経験です。

最後に、ミーティングは主催者一人の力で成り立つわけではありません。主催者は常に、参加者に感謝の気持ちを伝えることを忘れないようにしましょう。

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